作家のアトリエ 作家さんの工房を訪ねて ■ V.ボガート 楽陶にご協力いただいている作家の方々の工房訪問
ボガートさんはベルギー生まれ。両親が羊を沢山飼っていて、織物とか毛染め作業を手伝いながら育ちました。子供のころから手作りのものが好きだったようです。ベルギーも磁器が中心ですが陶芸は盛んです。とくに塩釉を使った花瓶や照明具といった装飾品が多いとのこと。
大学ではソシアルコミュニケーション(メディア関連のジャーナリズム、パブリックリレーション)を専攻していたのですが、夜はアート・オブ・アカデミーで好きな焼物の勉強をしていました。
その後、旅が好きでアジア、オーストラリアに長期滞在のあと日本にやってきました。「東京でフランス語と英語の先生をしていた当時、友達の紹介で日本の焼物のよさを初めて発見しました。ふりかえってみると、趣味でやっていたものが仕事になったという感じです」(笑)。
ボガートさんの現在の工房「アトリエ・ニキ」は笠間市郊外の南吉原というところにあります。以前は「春風万里荘」の近くでしたが、手狭になり一昨年この地に移りました。写真は入口風景で、左奥に工房があります。ちょうどお邪魔したときは作陶中でしたが、快く取材に応じていただきました。
工房を入ったところは「アトリエ・ニキ」のショールームになっていて所狭しと作品が置かれています。粉引きもありますが、最近の作品で、塩(塩釉)や炭化のものが多く並んでいました。ボガートさんに、作陶していて楽しい形は?とうかがうと、「花びん」「明かり(照明具)」「ふたもの」という答えがかえってきました。自分としては、単純なものより、いろいろ形を変えられる方がよく、手作りが好きな自分としての特長を出せるからだといいます。
ボガートさんの作品は伝統的な土ものの作風そのものですが、それにヨーロッパの機能的なデザインが融合されて、おおらかで使い勝手のいいデザインになっています。それと、笠間に来てからロイさん(ロイ・マーティン)と一緒に仕事をしていた関係で、彼の影響も受けています。それは、取っ手であったり、一個引き(ロクロで土を引き上げたりせず、作陶一個分の土から作りこむ)であったりします。
窯は工房の中に小物と大物を分けて焼くガス窯が二つ、庭に塩釉ものを焼く灯油窯(下の写真で、ボガートさん自身がレンガを積み上げて築窯したもの)があり、売れっ子の人気ぶりが伺われます。春・秋の陶器市(笠間・益子)に出店するほか、個展は年に2〜3回ですが、最近は益子・笠間のお店で結構売れているとのことでした。
仕事から離れての趣味は,「旅行」と「ハイキング」。旅行についていえば、毎年、1ヶ月から1ヶ月半の長期。この前はフランスに行ってやきものフェスティバルを見てきた由。国内も、京都(清水)や備前などやきものの里めぐりを兼ねて旅する。ハイキングは八ヶ岳、谷川岳、南アルプス、北アルプスと、こちらも本格的。
友達の多いのも気になるので聞いてみると「外人同士のネットワークもあるが、もともと人が好きだから」とのこと。それに「日本では自分はひとりぼっち。だから友達は大事です。」と、さすが「ソシアル・コミュニケーション」の優等生です。
終わりに、ファンの方へのメッセージをお願いしたところ、間髪をいれずに、「もっと買ってください!」(笑)。そして「最近、力を入れているのは、<赤志野>。楽陶のお客様には近々紹介していただけると思いますが、これは自分もとっても好きです。」 志野のぼってりした感じに、だいだい色が映えて、「色とイメージが自分にぴったり」とのこと。味があって、それにどこか「遊び心がある」というのも、ボガートさんが日ごろ目指している陶芸そのもの。きっと皆さんにも気に入っていただけると思います。
やきものクラブ・楽陶