楽陶短信 陶芸よもやまばなし ■陶芸の話 一器多様、逆も真なり
「一器多様」という言葉が茶の湯にあります。 これはひとつの器には、さまざまな料理を取り合わすことができるという意味。 たとえば、そば猪口にスープを入れたり、茶碗蒸しを作ったり・・・。 使い手の工夫で、やきものの魅力を引き出してみたいものです。
また逆に、湯呑みを3種類そろえ、お客様を迎えるとします。 お客様がみえたとき、食事が終わったとき、そして帰り際、3回とも趣の異なる湯呑みでお茶を出してみれば・・・。きっと、喜ばれるはずです。
作家ものの場合、大皿や大鉢は、作家自身が想いを込めて作陶していることが多く、同じ作家の作品でも小物の日常食器と比べて勢いが強く出ているものです。大皿や大鉢を普段づかいしてもステキですし、おもてなしの際に大皿に料理を盛って小皿に取るようにすれば、とても豪華です。
水に濡れた器の表情
粉引きの器や貫入の入っているもの、備前焼などの無釉の器や土が焼き締まっていないものは、器に透水性がありますので、料理を盛り付ける前に水につけると、煮汁や油が器に染み込むのを防ぐことができます。 しかも、濡れた感じの器の表情をさらに奥深いものにしてくれます。
また、これら無釉のもの、土が焼き締まっていないもの、粉引きのものなどは、汚れたまま長時間放っておくと、シミになることがあります。 だから、台所に下げたら、手早く落としたいものです。
この次の出番のために
土ものの器は水気を含みますので、まれにカビが生えることがあります。 土ものの器をしまうときは、完全に乾かしてからしまいます。口が小さい徳利などは、中が乾くまで時間がかかるようです。
組になった器は、同じものばかり使うことがないよう、洗ったものを下に重ねていくようにして、順繰りに出番を与えてあげたいものです。